3冊目 「砂と人類」 ヴィンス・バイザー
「砂と人類」 ヴィンス・バイザー
・私たちと砂の関係
『誰もそれなしでは生きられないものである。』
この一文から始まる本書は、私たちの生活がいかに「砂」という物質に頼り切っているのかを教えてくれる。
窓の外を見て欲しい。
外を見たときに視界に入ってくる横の家やビル、はたまた家の前の車が走る道路までもが「砂」という物質で出来ている。
次は家の中のモノを見て欲しい。
このブログを見ている人であれば全ての人が持っているであろうスマートフォンやタブレット、パソコンにとって必要不可欠なシリコンチップも全て、海に行った時に靴に入ってきて不快に感じるあの「砂」からできているのだ。
(ちなみにシリコンチップは石英という物質が基であり、和歌山県にある白良浜にあるあの綺麗な「砂」も石英Sio2である)
つまり、私たちの生活と「砂」は切っても切れない関係ということである。
・砂の採掘
私たちが「砂」から作られたモノを利用する限り、必ずその「砂」を採掘してくる必要がある。
今、世界中でその「砂」の採掘をめぐって様々な事件が来ている。
例えば、2016年にインドで起きた橋の崩壊で26名が亡くなり、カンボジアからシエラレオネ(本書で初めて名前を知りました)という国では、「砂」による採掘で環境被害がひどくなり漁師たちが生計を立てることができなくなっている。
また、アメリカの海岸では「砂」が採掘されすぎて、海岸が姿を消しつつあるという衝撃的な出来事についても述べられている。
・これからの「砂」
「砂」は私たちの生活そのものである。「砂」という物質が存在してくれてからこそ、私たちは外界から隔絶された暖かい建物の中で過ごすことができ、遠く離れた土地への旅行でもコンクリートやアスファルトで整備された道路の上を車で走ることでお尻を傷めずに道中も楽しめるのである。
しかし、発展途上国の人々も先進国と同レベルの生活水準を求めるようになり、「砂」必要性が一段と激しくなった。
というのも、急激な都市開発により、「砂」が大量に必要になっているからである。
建物の建設用だけではない。
今日では、世界中の人間と仕事をする上でインターネットが不可欠であり、その恩恵を受けるためにはスマートフォンやタブレット、パソコンが必要である。
私は以前、ニュースで中国が海底から「砂」を大量に浚渫しているという記事を読み、当時は理由がわからなかったが本書を読み終わった後には納得がいった。
[「砂」を制する者は世界を制する]のである。
これに各国はいち早く気づき動き出したのである。
だからといって誰もが、我先にと「砂」を採掘していいわけじゃない。
つい1週間ほど前にイギリスのダックリントン湖で13歳の少女が亡くなっている。この女の子は妹の頭を水面に持ち上げて助ける一方で、自らが犠牲となった。
事件現場となったこの湖は、1980年代中頃に市の道路を作るために砂利や石が採取されて、その後、人工湖として生まれ変わっていた。
このように私たち人間が「砂」を過剰に採掘することで自然環境が悪化している。
近年、台風などの勢力が年々強くなっているのも「砂」の減少が一因だとも言われている。
本書は、「砂」が私たち人間の歴史、そして、これからどのように付き合っていくかを教えてくれている。
是非一読してほしい。